2025/03/08
皆様こんにちは。
今から音楽を始めたい超・初心者のための新宿バンドサークル「おとかぞく」代表のひろです。
今回はバンド活動における時代の移り変わりについて、大きく分けて3つの時代を順にご説明したいと思います。
1.バンドブーム
2.無風時代
3.SNS戦国時代
1.バンドブーム(昭和~平成初期)
現在50~60代の世代の方にとっては懐かしい響きかも知れませんが、当時は「バンドブーム」というものがありました。
BOOWYやブルーハーツ、尾崎豊さんなどを筆頭に音楽やバンドが盛り上がっていたあの時代です。
TVでは「イカしたバンド天国」通称「イカ天」という人気番組もあり、オーディション形式で勝ち上がったバンドがデビューして人気になっていくという時代でした。
イカ天出身のバンドといえばブランキージェットシティー、BEGINなどが代表的ですが、今なお時代を越えて歌い継がれる名曲たちの多くはこの時代に生まれたヒットソングであると言えます。
今では信じられないかも知れませんが、この時代のライブハウスにはお客さんが溢れていました。
「今日は暇だからちょっとライブハウスに行こうか」という会話があった時代で、今でいうクラブのようにとりあえずそこに行けばたくさん人がいるという状態でした。
このような状況下ではバンドマン達は非常に活動がやりやすく、まだ集客力のないバンドでもとりあえずライブハウスに出演すれば多くのお客様の前でパフォーマンスができるという状態です。
その中で自分たちのファンを獲得し、人気バンドになっていくという図式です。
無名のバンドでもギャラが貰えていた
もちろんその中でも力を発揮できず埋もれていくバンドも星の数ほどいたものの、現代のようにライブハウスに人がいない頃と比べればそれこそバンド天国で、無名のバンドでもライブに出演するとギャラがもらえるという構造でした。
なぜこのような構造が生まれるかと言うと、それはやはり「ライブハウスに自動的にお客様がいた」からです。
ライブハウスに来るお客様が落としたお金を、ライブハウス側とバンドが分ける、つまり、今のようにバンドはノルマなどのお金を支払うことなく、実力があればライブハウスに出演でき、多くのお客様の前でパフォーマンスできるチャンスを得るだけでなく、ギャラまで貰えていたのです。
お客様は「今日はライブハウスに遊びに行こう」と気軽に足を運び、それが現代で言うクラブやスターバックスに行くことと同じように、ある種のファッションであり今どきの遊びだったのでしょう。
そのため、
ライブハウス→集客のために様々なイベントを打つ
お客様→楽しいから遊びに行く
バンド→動員を気にせず、お客様の前でパフォーマンスをすることに集中できる
という理想的な形でした。
2.無風時代(平成中期~平成後期)
現在30代半ば~40代の方がこの時代にあたります。
無風時代と表現した理由は次項にてご説明いたしますが、今から振り返ってみるとこの時代はバンドブームでもなくSNSもなく、バンドマンにとっては非常に厳しい時代だったと感じます。
※当時の私たちがそう感じていたわけではありません。
ライブハウスが仕組んだ「ノルマ制」が地獄の始まり
この時代は既にバンドブームも去り、ライブハウスにお客様がいない状態でした。
街で遊んでいる若者が自主的にライブハウスに足を運ぶことがなくなったため、ライブハウスは集客に困り始め、そこで「ノルマ制」という地獄の制度が出来ました。
要はライブハウスが集客努力をバンド側に押し付けたということです。
前項のバンドブーム時代ではバンド側は演奏やパフォーマンスの練習に集中でき、ライブハウスに出演すれば多くの人の前で演奏を見てもらうことができ、さらにギャラまで貰えていたのに、
この時代になるとお金を払って出演したのに客席はガラガラという地獄が始まります。
もちろんライブハウス側を悪く言っているわけでも、自分たちの境遇を嘆いているわけでもありません。ただ純粋にそういう時代だったのです。
集客努力を押し付けられたバンド側は、演奏やパフォーマンスの練習だけでなくライブハウスにお客様を連れて行く努力を強いられました。
しかし多くのバンドマンはそのやり方が分からず、「ライブハウスで演奏すればファンが増えるはず」としか考えていなかったため、どうすればいいのか全く分かりません。
その結果、しょうがなくお金を払ってライブハウスに出演させてもらうものの、ライブハウス側に集客力がないため客席はガラガラ、メンバーの数よりも少ないお客さんの前で演奏をして大赤字で帰るだけという地獄絵図が続きます。
ライブハウスの仕組みと対バン
ここでライブハウスの仕組みをご説明いたします。
言うまでもなくライブハウスも商売でやっているので、お客様からお金をいただく必要があります。
例えば1日ライブハウスを借りるために必要な料金が20万円だとすると、ワンマンライブを開催するには1バンドのみで20万円を支払う必要があります。
チケットを1枚2000円とすると、100人動員してやっとペイできるので、101人呼べば2000円がバンド側の利益となります。
しかし、1バンドで100人も動員できるバンドはそう多くありません。そこで、キャパ100人のライブハウスに出演するために、例えば5バンドが集まって「20人ずつ集客しよう!」という仕組みが「対バン」です。
この形式を生み出したことにより、まだ集客力のないバンドでも複数で集まって大きなライブハウスでパフォーマンスできる、同時に、他のバンドのお客様の前で演奏できるためお客様を共有、もしくは奪い合いができるという構図になったわけです。
ここで問題となってくるのは、ライブハウスにとっては何の痛みも無いという点です。
1バンドのみが出演するワンマンライブであろうが、5バンドで行う対バン形式であろうが、ライブハウスに入ってくる金額は同じです。
バンドマン達は集客努力を押し付けられ、お金を払って出演させてもらったのに客席はガラガラで成果が出ない反面、ライブハウス側は集客努力を放棄しバンド側に押し付け、お客様ではなくバンドにお金を払ってもらうことで生き残っていくわけです。
※念のためもう一度言っておきますが、私はこの時代に何の文句もありません。ただ純粋にこういう時代だったということと、この時代にバンドで結果を出したりプロになった方は本当に凄い!ということをお伝えしたい意図で書いております。
これ以外にやり方がなかった
そんな時代の中、バンドマン達はそれでも日々ライブハウスに出演し、メンバーよりも少ない数のお客さんに向かって一生懸命にパフォーマンスをしていました。
1回のライブで1人でもファンが増えることを願って、そして今回たまたま自分達を見てくれた人が次のライブにも足を運んでくれることを願って、毎日良い曲を作ろうと奮闘し、よりかっこいいパフォーマンス、衣装、MCなどを練り上げていました。
しかし集客方法がライブハウスで演奏する以外にないため、毎回赤字を掘ってどんどん疲弊していくばかり。
アルバイトで得たお金をライブハウスに払うものの、お客さんがいないので友達や彼女にお願いして来てもらい、なんとかライブのような形にしていました。
中には対バンで知り合ったバンドマン同士が「お前のライブを見に行くからオレのライブにも来てくれよ」という、お互いのバイト代を仲間内で回しているだけという意味不明な構造も生まれてきます。
今ではSNSがあるので不思議に感じるかも知れませんが、当時は本当にそれ以外にやり方がなかったのです。
途中からmixiというSNSが登場しましたが、やはり前時代の名残が大きくあり、そういうものを使って集客するバンドは怪しいという風潮もありました。
もちろんオーディションに応募したり、バンドコンテストで勝ち上がったり、TVやラジオなどのメディアに応募して出演したりという方法もありますが、そこで勝ち上がったり選ばれたりするのはごく少数のバンドマンだけ。
基本的にはこの不毛な活動を繰り返すしかなかったバンドマンがほとんどです。
繰り返しになりますが、この時代にバンドマンとして生き、何らかの結果を残したりプロになったりメジャーデビューをした方は本当に凄いとしか言えません。
SNS戦国時代
時代は流れ平成後期、そして令和へと移っていきます。
この頃になるとインターネットが発達しSNSの普及、そしてYouTubeでの活動も盛んになってきます。
ライブハウスという存在も「お客さんがいるもの」→「お客さんがいないもの」→「SNSで作ったファンと会える場所がライブハウス」と変わっていきます。
現代ではまずSNSで活動をしフォロワーを増やし、その中から特に好きでいてくれるファンがライブに足を運ぶという図式が完成しました。
現代でSNSを使わず(もしくはSNSを頑張らず)ライブハウスのみで活動をしてファンを獲得しようとしている人がいるのでしょうか?
もしいるとしたらそれは完全な原始人で、今はそういう時代はないように感じます。
ライブハウスにはお客様がいなくて当然、ただのレンタルホールであることを理解し、自分達で事前にSNSでファンを作り、そのファンをライブハウスに連れて行くという流れを理解しましょう。
ただ、一言にSNS時代と言っても、誰でもSNSを始めれば人気者になる、誰でもYouTubeに投稿すればバズるというわけではありません。
それこそ緻密な戦略や継続できる根気は最低限必要ですし、その中でもさらにセンスが光るバンドや圧倒的歌唱力または演奏力を持ったバンド、あるいは時代の追い風に乗ったバンドのみがこの時代を勝ち上がることが出来ます。
とは言え、やはり昔と比べるとバンド活動がやりやすくなったことは確かな事実です。
ボタン一つで世界中に自分たちの曲やパフォーマンスを知らせることが出来るわけですから、この時代に勝ち上がれないということはすなわち、その曲やパフォーマンスに価値がないと烙印を押されるようなものです。
私たちの世代は「バンドブームが終わったから」「SNSがなかったから」という言い訳もできますが、現代を生きるバンドマンはこれだけの便利な機能や設備が整っているため、言い訳の余地が全くないという側面もあります。
最後に
今30代半ば~40代の方々の時代を「無風時代」と表現したのは、現代のSNS時代があるからこそです。
当時は私たち自身「無風時代」とは思っていませんでしたし、こういうものだと思って当たり前のように活動していました。
しかし現代のSNS社会を見ると、「振り返ってみればあの頃はバンドブームでもなくSNSもなく、どうにもやりようがない時代だったのだな」と感じます。
あの時代に勝ち残ったバンド達に最大の賛辞を贈ると共に、現代のバンドマン達にはこの恵まれた環境を存分に生かし、ぜひ夢を叶えていただきたいと願うばかりです。